世界が絶賛した映画
「ドライブ・マイ・カー」の
劇用車“SAAB900”
映画やテレビで俳優が乗る劇用車を用意する仕事をしている
武藤貴紀さんの愛車は1990年式のSAAB900ターボ。
SAABは元々スウェーデンの航空機メーカー。
それゆえクルマも航空力学に準じていて、理にかなった独特の美しいカタチをしている。
「古いクルマのデザインが好きなんですよね。サーブ900は仕事の劇用車とは関係なく、自分の自家用車として探していたんです。」
購入時はボロボロの状態だったというサーブ900。
武藤さんの愛情によって再生され、世界が注目する特別な1台になった。
運命に導かれ、
映画のキーとなるクルマに抜擢
赤い個体を見つける前は、紺色のサーブ900と迷っていたという。
「 結局、赤にしたんです。『ドライブ・マイ・カー』で選ばれる際に、
日本の風景の中に赤が映えるように、という理由があったらしいです。
ということは紺色だったら選ばれなかったでしょうね。
これもひとつの運命というか。」
映画ではカセットテープに吹き込まれた音声を車内で再生するシーンが
描かれている。
カセットテープデッキが付いていたことも採用の理由だったそう。
頼れる主治医の存在
劇用車として採用が決まったときは不安もあった。
「これだけのロードムービー耐えられるのかなと思って…
北陸から東北を走っているところはずっと一緒にスタッフとみんなで帯同していったんです。」
武藤さんのサーブ900は劇中で広島から北海道までドライブする設定になっており、
実際にその道のりを走破した。
しかし、撮影中にラジエーターのリザーブタンクがパンクするトラブルもあったという。
「自動車修理工場のA2ファクトリーさんでパーツをもらって新潟まで持っていき交換したこともありました。」
古いクルマゆえに専門的な知識と技術を持った頼れる“主治医”の存在は必要不可欠だ。
~A2ファクトリー~
サーブのスペシャリストとして知られている自動車整備工場。
日常のメンテナンスから車検、故障修理まで幅広く対応しており、旧車・絶版車・希少車の整備にも力を入れている。
長年の経験を持つメカニックが在籍しており、大切に長く乗り続けたい愛車を安心して任せられるという声も多い。
たくさんの人に評価された
幸せなクルマ
サーブ900で街に出ると映画を見た人に声をかけられる。
撮影中はこんなにたくさんの人に見てもらえると思っていなかったという。
「映画の力ってすごいなと思いました。
愛車が劇中で重要な役割を与えられ、その作品がカンヌで賞まで獲ったということは、仕事の枠を超えてとても誇らしい気持ちです。」と語る武藤さん。
映画で気づかされた
サーブ900の魅力
「好きなところは音ですね。
気づかせてくれたのは映画『ドライブ・マイ・カー』なんですよ。」
ドアのキーキーいう音、ドアの閉まる音…自分では気づかなかった音が映画では使用されていた。
「こういうところ好きなんだなぁって…」
武藤さんとサーブ900の物語は、これからも続いていく。
サーブ900 1990年式の旅
大好きな車と訪れたい場所
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原爆ドーム
1945年の広島への原爆投下によって、唯一建物の一部が残った。2006年に「原爆ドーム」として世界遺産に登録され平和への祈りを込めて、広島平和記念公園内に保存されている。
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広島市環境局中工場
最新の技術を導入したごみの焼却工場。世界的に有名な建築家である谷口吉生氏が「平和と創造のまち」をテーマに設計。ごみ処理施設のイメージを一新する建築デザインの建物です。「ドライブ・マイ・カー」劇中ではドライバーの、みさきが主人公の家福を案内している。
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中の大橋
安芸灘諸島連絡架橋としては、本州より数えて6番目の橋となる、柑橘の島を結ぶアーチ橋。瀬戸内の島々の美しい風景が望める。